福岡高等裁判所 昭和30年(う)614号・昭30年(う)615号 判決
原判決が被告人朴良子は安田某が覚せい剤注射液四cc入アンプル一、四一〇本、二cc入アンプル一五〇本を製造するに当り注射液をアンプルに詰めて右製造を幇助したと認定し覚せい剤製造の従犯として処断したことは所論のとおりである。所論は被告人の右所為は覚せい剤の製造に該当するから原判決は法律の解釈を誤つたものと主張し、昭和二八年一〇月二八日の最高裁判所第一小法廷の判例を引用する。そこで原判決挙示の証拠を調査してみると安田某は覚せい剤注射液四cc入アンプル一、四一〇本、二cc入アンプル一五〇本を製造したのであるが、その製造に当り安田は注射液そのものの製造と注射液のはいつたアンプルの口を封緘する仕事をし、被告人は安田からたのまれて既に安田が製造した注射液を空アンプルに注入する仕事だけに従事したことが認められるから原判示に被告人が注射液をアンプルに詰めるとあるのは被告人の右所為を指しているものと云わねばならない。
而して被告人がしたような既に製品となつている覚せい剤注射液をアンプルにうつし入れるだけの所為はそのアンプル入注射液の製造とは云えない。ただ通常の場合には覚せい剤製造の未遂罪を構成することになるだけである。引用の判例は覚せい剤取締法にいわゆる製造には製品を小分して容器に納め封緘を施し、覚せい剤の施用機関又は研究者に譲渡するに適する状態に製作する場合をも含むというのであるから本件に適切でない。
原判決が判示事実に対し覚せい剤製造の従犯として処断したのは相当であつて原判決には所論の違法なきを以つて論旨は理由がない。
(裁判長裁判官 西岡稔 裁判官 後藤師郎 裁判官 中村荘十郎)